注目の論文

Kurotani et al. Nature Commun. 16, 3483 (2025) (野田口班)

【注目の論文1】

接木において誘導されるオートファジーは傷修復を促進する

接木は二つ以上の植物を人為的につなぎあわせて育成する、古くから利用されてきた農業技術です。植物が傷口を再生する能力を利用した技術であり、その過程では細胞脱分化、細胞増殖、組織癒合、組織再生などが連続して起こると考えられています。しかし、この再生のエネルギー源については分かっていませんでした。今回私たちは、接木の傷修復において、傷口近傍の細胞においてオートファジーが活性化することを発見しました。オートファジーは細胞内で古くなったタンパク質や小器官を分解・再利用するリサイクルシステムです。オートファジーの変異体では接木した傷口で細胞増殖が起こりにくくなったことから、オートファジーによる自食作用が新たな細胞の形成を促し、接木を成立させることが明らかとなりました。傷ついた植物がすみやかに組織再生するしくみの理解につながり、接木の効率化といった応用も期待されます。

Kurotani, K.-i., Shinozaki, D., Okada, K., Tabata, R., Kawakatsu, Y., Sugita, R., Utsugi, Y., Okayasu, K., Mori, M., Tanoi, K., Goto, Y., Sato, M., Toyooka, K., *Yoshimoto, K., *Notaguchi, M. 

Autophagy is induced during plant grafting to promote wound healing. Nature Commun. 16, 3483 (2025) Link プレスリリース