Liu et al. Curr Biol. 35, 2049-2063 (2025) (野田口班)
【注目の論文2】
種子形成は篩管末端の栄養輸送ゲートにより制御される
種子形成は植物の生存に重要であるとともに、米を食べて生活する私たちにも大切です。しかし、植物が受精をきっかけに種子を大きくする機構は不明でした。種子は、受精した胚珠に親組織から栄養が送られて作られます。私たちは、親組織と胚珠をつなぐ珠柄の内部にある篩管の出口に、多糖類の一種であるカロースが蓄積して栄養の輸送を制御するゲートが作られることを発見しました。このゲートは胚珠に花粉管が侵入した刺激で形成され、花粉管から精核が放出されて受精が成功すると、カロース分解酵素が働いてゲートに穴をあけ、栄養が胚珠に送られました。また受精に失敗すると、ゲートは閉じたままで栄養が送られることはなく、無駄を避ける機構であることが分かりました。この現象は、モデル植物のシロイヌナズナでもイネでも働くことから、植物が普遍的に備えた機構であると考えられます。ゲート開通の鍵となるカロース分解酵素を高発現すると栄養の送達が促進され、通常よりも大きな種子が作られたことから将来の食を支える技術としても期待されます。
Liu, X., Nakajima, K.P., Adhikari, P.B., Wu, X., Zhu, S., Okada, K., Kagenishi, T., Kurotani, K.-i., Ishida, T., Nakamura, M., Sato, Y., Kawakatsu, Y., Xie, L., Huang, C., He, J., Yokawa, K., Sawa, S., Higashiyama, T., Bradford, K.J., *Notaguchi, M.,*Kasahara, R.D.
Fertilization-dependent phloem end gate regulates seed size. Curr. Biol. 35, 2049-2063.e2043 (2025) Link プレスリリース